300年クローゼット特別インタビュー 落合陽一「未来予想論」

300年先の未来は、一体どうなっているのか?
“現代の魔法使い”の異名を持ち、
常に未来を形にしている
科学者・落合陽一さんにお話を伺いました。

今後300年での一番大きな変化は、
コンピューターがある種の自然になっていくことだと思うんです。

創業300周年を迎えた大丸が、300年後までお客様の思い出の品物とストーリーを残す「300年クローゼット」プロジェクトをはじめます。落合さんが考える300年後の未来についてお話を聞かせてください。

300年って、けっこう長いですよね。300年前に何があって何がなかったかを考えると分かりやすいと思うんですけれども。たとえば300年前には電気もないし、鉄道もない。我々の国には今のような憲法もなかったし、たぶん人権という考え方すらなかった。出産の方法や、寿命の長さも大きく変わった。300年という時間は、テクノロジーはもちろん、制度や人の考え方、生まれてから死ぬまでの行程まで変えてしまう長さですよね。

その上で、今後300年での一番大きな変化は何かと言うと、社会におけるコンピューターが占める割合が大きくなり、それがある種の自然になっていくことだと思うんです。デジタルネイチャー、つまり、人工物と自然物の区別がつかない世界になっていく。

「変わるもの」と「変わらないもの」。
その差を考える上で、モノを残すことは意味があると思う。

では逆に300年たっても変わらないものは何でしょう。

そうですね。たとえば、身体の大きさ。江戸時代から若干大きくなってはいますけど、劇的な変化はないですよね。それに伴って、身体がベースになっている物事や感覚は、おそらく大きくは変わらない。たとえば我々は、300年前のお椀を見て、これを使ってごはんを食べたんだろうなってことが容易に想像できますよね。僕たちが今使っているモノを将来の人類が見た時にも同じことが起こるはずなんです。

だからこそ、モノを300年保管することは、ただモノを残す以上の意味があると思いますね。モノには、手触りの感覚や、生活の感覚まで宿っているから。「変わるもの」と「変わらないもの」。その差を考える上で、フィジカルな物体を残すことはとても意味のあることだと思います。

自分の思考プロセスを記録したコンピューターを残したい。
それが将来、今の時代のコアな考え方を紐解くヒントになるから。

では、そんな300年先の未来に、落合さんなら何を残したいですか?

自分のスマートフォンかパソコンですね。僕がどうやって人とコミュニケーションをとり、モノを創り、写真を撮ったのかという、今の僕しか覚えていない感覚を残したい。

僕らは今、僕らの常識の範疇で昔の人の行動を解釈していますよね。でも、たとえば江戸時代の人の考え方って、今の感覚とは大きくズレているはずなんですよ。江戸時代の日本語と今の日本語って、同じように見えてちょっと違う。たとえば「自由」や「平等」といった言葉は明治時代頃に発明され広まったので、意味はもちろん、考え方も通じない。もっと言えば、何をしたら幸せなのか、何をしたら嬉しいのかということすら、共有できないほど違うはずなんです。それはきっと300年後も同様に変化してしまう。すると、300年後の人類も、僕らの今の正しい感覚を多分理解しきれない。

だから僕だったら、僕の思考プロセスを記録したコンピューターを未来に残しておく。それは、この時代の人間のコアな考え方や感覚を紐解くヒントになると思うから。ここで大切なのは、ネット上ではなく、フィジカルなモノに残しておくこと。ハードウェアは慎重に保管しておけば、今の状態のまま100年後、200年後、300年後も情報が取り出せると思うんです。

300年後の百貨店は、
個人向けの商社みたいになると思う。

今後デジタル化が進む中で、フィジカルにモノを残すことの価値が相対的に高まると。その流れの中で、300年後、百貨店はどうなっていると思いますか?

300年後の百貨店は 外商機能だけになっていると思います。ただ買い物をするだけの場所ではなくて。たとえばご飯を食べるとか、服を選ぶとか、面白い催しをするとか、一般人の消費行動すべてをとりまとめてコーディネートする、個人向けの商社みたいなかたちになるんじゃないでしょうか。時間がない時に、洋服や手土産、食事をするお店まで選んでおいてもらえるってありがたいですよね。それを普通にエンドユーザーが利用できるようになれば効率的だなと思います。

では、もし落合さんが百貨店を作るならどんな百貨店をつくりますか?

百貨店っぽくないのに、なんでも買える百貨店をつくりたいですね。商品の陳列棚をすべてなくして、実店舗感も少なくして、展示やイベントばかりやっているような。その展示の横に外商の応接スペースをたくさん設置して、そこであらゆる注文を承るイメージ。ITの力を使えば、2時間ぐらいですべての商品が都内から手に入るでしょう?ご飯食べている間に、注文した商品が手元に届く。そんなコンサルサービス的な百貨店を、僕だったらやりたいかな。

落合陽一 Youichi Ochiai
1987年生まれ。科学者・メディアアーティスト。2015年東京大学大学院学際情報学府博士課程早期修了、博士 (学際情報学)。その後、ピクシーダストテクノロジーズ株式会社創業、フェーズドアレイ技術やデジタルファブリケーション技術の開発に関わる。2015年より筑波大学図書館情報メディア系助教 デジタルネイチャー研究室主宰。2017年よりピクシーダストテクノロジーズ株式会社と筑波大学の特別共同研究事業「デジタルネイチャー推進戦略 研究基盤」基盤長/准教授。機械知能と人間知能の連携について波動工学やデジタルファブリケーション技術を用いて探求。
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